中国では古代より、独自の自然観、人間観に基づいた伝統医学『中医学(中国医学)』を発展させてきました。中医学では、身体を『つながり』と『バランス』でとらえます。身体を細分化して考える現代医学とは異なり、身体の全体像からみていきます。これは中医学の考え方の根本にあるもので、『整体観念』と呼ばれています。この『つながり』と『バランス』を解析するツールが『陰陽五行』であり、古代中国自然観の基本的な考え方です。
疾病を『バランス』が崩れた状態と考え、疾病の状態をバランスベースの『証』で表し、『バランス』を整える方向で治療・養生します。治療・養生の流れは、身体をよく観察して、その状態をきちんと把握し、中医学のフィルターにかけて『証』を導き出します。『証』はバランスベースなので、『証』に従い、不足したものは補い、多すぎるものは取り除くといった、非常に単純な方法で治療方針が導かれます。つまり、証が決まれば、おのずと治療方針が決まります。
そのことは『弁証論治』と呼ばれ、中医学の主な特徴の一つです。
治療方法は、三大治療法として、湯液、鍼灸、推拿があります。
湯液とはいわゆる漢方薬を使っての治療で中国では証によって導き出された治療方針に沿って、処方された生薬を煎じて服用します。現在は、煎じ薬より、簡単で飲みやすい単味エキス剤による方剤が主流になっています。場合によっては点滴や注射することもあります。また中成薬といって最初から方剤された丸剤錠剤タイプの飲みやすいものもあります。日本ではツムラやクラシエなどの漢方薬を扱うメーカによる日本独自の処方でのエキス剤が主流です。
鍼灸は鍼や灸、推拿は手技で、証によって導き出された治療方針に沿って、経絡、経穴(ツボ)を刺激します。
このように、どのような治療方法にしても弁証論治によって治療方針を導き出すというのが
中医学の大きな特徴です。